Shieo Kobayashi 職人だから死ぬまで現役だ。

Shinjo Shi 新庄市 未来工房 小林繁男

未来工房 小林繁男 作業風景

未来工房 小林繁男 作業風景

 よく働く手は、手早くモノを完成させる。作業は流れるように行われ、いとも簡単に作られているように見える。これは、優れた仕事をする人の共通点だ。
 新庄市には、腕の良い職人がいる。小林繁男は、注文された品を糸鋸盤で驚くような速さで作っていた。ガタガタと糸鋸が上下している盤上で、四角だった木があっという間に動物の形に切り抜かれる。未来工房を創業しておよそ二十年、その以前もずっと木工に関わる仕事していた。一息入れてコーヒーを飲みながら言った。
「おれはバカだから、何でも見せちまう。昔の職人は、自分の仕事を他の人には見せねぇんだ。」
 その言葉通り、今でも作業を見せたがらない職人は多い。だが、小林は、人前で糸鋸盤で組木を作ることや、ろくろを回してこけしを作ることに抵抗はない。木工細工職人として多くの実演経験を持ち、遠い所では広島県で実演をしたこともある。
「実演ってのは、一回でも失敗したら終わりなんだ。失敗しなくても技術を盗まれてしまうから、職人としてはあまり良いことはない。じっと見られてると目線で同業者だと分かるもんだよ。でも、見たところで簡単に真似できるものじゃないから気にしてないけどな。」
 ぶっきらぼうな口調が職人らしさを強調する。今の技術を習得するまで人から手ほどきを受けて学んだことはなく、全て目で見て手を動かし覚えてきた。口では言わないが、人前で難なく作れるのは数えきれない失敗と試行錯誤があってのこと。今年で六十歳を迎える小林は、天井を見上げて言った。
「普通だったら定年の歳だけど、職人だから死ぬまで現役だ。」
 工房に並んだこけしは、彼の木工人生を全て見てきたような優しい表情でその言葉を聞いているように見えた。優れた職人は、口より物で想いを伝えることが出来る。この土地でずっと木工の世界に身を置き続けてきた彼の手は、紛れも無く職人の手。長沢こけし継承者、小林繁男。
 きっと、彼の工房からろくろがなくなることはないだろう。

もがみの弁当筒

〈制作者〉筒:小林繁男(未来工房)〈素材〉筒:東北の木材(ケヤキ、エンジュ )