Masami Shinobu 育てる事から漆を理解する

Funagata Machi 舟形町 有限会社ワンツー 信夫正己

有限会社ワンツー 信夫正己 作業風景
有限会社ワンツー 信夫正己 作業風景

有限会社ワンツー 信夫正己 作業風景

 舟形町堀内の住宅街の中に、他の家とは雰囲気の違う昭和時代を感じさせる木造の建物がある。味わいの増した外壁の無垢材が経年を感じさせる。
 二階にある玄関の白い扉を開けると、シェードから差し込む光が綺麗に整えられた部屋を心地よく照らしていた。温かいコーヒーを淹れ、デスクに向かい鉛筆をとる。白い紙の上に、何度も何度も描いては悩む。
 このお客さんは、どのような家族構成で、どのようにしてご飯を食べるのだろうか。通勤時間はどれくらいで、帰宅時間は何時くらいか。家にいる時間が長いのは誰だろうか。どの部屋に人が集まるのか。
 インテリアデザイナーの信夫正己の仕事は、人の暮らしを考える事から始まる。暮らしに溶け込み、長く心地よく使える道具になるようにと。店舗、図書館、住宅など人が活動する場所にオーダー家具を使って空間をデザインしたり、箸や皿、米びつ等の暮らしの道具を作る事を長年続けている。
仕事の半分以上が県外の案件。しかし、この土地を離れようとは思わない。
「都会が嫌いというわけではなくて、行ったり来たりすることで、すぐそばにある自然が当たり前に感じないし、天然素材の良さを伝える人間として、ちょうど良い距離感を保てるんですよ。それと、この地域の厳しくも豊かな環境って、住まないと分からないじゃないですか。仕事の大半は県外ですが、山形のことを知ってもらうことを考えています。以前、東京でエコ関連の展示会に出展したときの話なのですが、レセプションで挨拶する時間があったので、その日の朝に自宅近くの森でブナの実をたくさん拾って持って行ったんですね。拾った実を展示品の周りに散りばめて、挨拶のときに皆さんに自由に持って帰って下さいと伝えました。その時期は森に新しい命が芽生える頃だったので、都会には無い豊かな自然のことを伝えたいと思ったのです。」
 全国的に地方の人口流出が叫ばれている中で、彼のように地元にいながら都会との仕事を両立している人がいる。一方で、都会から田舎へと、新しいライフスタイルを求めて移住する人が増えている時代。矛盾する人の流れを脇目に、住み慣れた土地で今日も鉛筆を握る。
 一生のうちで、どこで、どんな人と、どんな風に暮らすのかは考え方次第。この土地だからこそ提案できる素材や風土がある。信夫正己は、暮らしのデザインをテーマに、創業当初から変わらぬ想いで地方の豊かさを提案し続けている。
もがみの箸留

〈制作者〉箸:信夫正己/留具:伊藤和江
〈素材〉箸:東北の木材(エンジュ、ヤマザクラ)/オイル:最上のえごま油/留具:山葡萄の樹皮

もがみのカトラリーセット

〈制作者〉箸:信夫正己/留具:伊藤和江
〈素材〉カトラリー:東北の木材(ヤマザクラ)/オイル:最上のえごま油/留具:最上の山葡萄樹皮