Kazue Tan より長く生きて愛されるような物を

Kanayama Machi 金山町 蔓細工作家 丹和恵

蔓細工作家 丹和恵 作業風景

蔓細工作家 丹和恵 作業風景

 結婚当初は、駅もなく山ばかりの金山町にいることが憂鬱だった。新庄市で生まれ育ち、夫の元へ嫁いだことで金山町へ移住した。あの頃は、住み慣れた場所を離れたこともあり、この町の魅力が分からなかった。四人の子宝に恵まれ、子育てや仕事と忙しい日々を送る中でそんな気持ちは忘れていった。時が経つのは早いもので、子供達は巣立ち、今では夫と二人でのんびり暮らしている。
「若い頃は、この町の良さに気づかなかったのですが、今では金山町のことがすごく好きなんです。白壁造りの建物が並んでいたり、古い蔵がたくさん残っている町並みが素敵。町並みを見に全国から色んな人が来るんですよ。それと、作ったこの鞄のように、山葡萄蔓のような天然の素材が採れる豊かな自然に囲まれていることって貴重ですよね。この歳になって思う事ですけど、若い人にこの自然の良さを知ってもらって、これからも町を維持していって欲しいなって思います。」
 丹和恵は、山葡萄蔓で作られた趣のある手提げ鞄を持ちながらそう話す。十三年前、友人に誘われて一年間通った籐細工教室をきっかけに、今も生活を彩る編組品(へんそひん)を作っている。加工がしやすく染めることが出来る籐も良いけれど、山葡萄蔓に出会ってからは、素朴で品のある日本らしい山の素材で編むことが多くなった。山葡萄蔓や胡桃の樹皮で作った手提げ鞄を持ち歩いていると、それを見た人から作って欲しいと頼まれることもある。
「昔は、この町にも山の材料で編み物をする人がいたらしいのですが、今ではほとんどいなくなってしまったようです。町中の老舗商店に、葡萄蔓の品物が飾ってあるのを見た事があるのですが、艶があってすごく綺麗だったんです。いつ出来た物かは分からないけど、とても古い物らしい事を聞きました。胡桃の油を塗って使い続けていたら、艶が出てぴかぴかになったらしいのです。山の素材でしっかりと作られた物は、三世代以上使えると言われています。私の作った物が誰かの手に渡って、その人の人生より長く生きて愛されるような物を作っていきたいです。」
 彼女が愛用する手提げ鞄は、いつか孫が使うようになるかもしれない。
きっとその時、孫は誰かにこう言うだろう。「これ、おばあちゃんの鞄だよ。いいでしょ。」
もがみの弁当籠

〈制作者〉かご:丹和恵
〈素材〉かご:最上の山葡萄樹皮