kazue ito 見栄をはらず 自然と共に暮らす

funagata machi 舟形町 蔓細工作家 伊藤和江

蔓細工作家 伊藤和江 作業風景
蔓細工作家 伊藤和江 作業風景

蔓細工作家 伊藤和江 作業風景

物が無い時代には、木通(あけび)の蔓、山葡萄蔓、胡桃の樹皮等、山の材料を使って生活の道具を作っていた。現代では、その材料を扱える職人は七十を過ぎる年齢から点々と存在するというのが現状だ。昔のように生活のためではなく、好きだからという理由で蔓細工をする人も少なからずいる。舟形町に住む伊藤和江は、趣味で教室に通った事をきかっけに、今では山に入り材料までも自分で採ってくる。山の中で育った夫は、自然のことになると師匠になる。夫婦で山に入り、材料を見つけてはマナーの範囲内で採取する。木通蔓のカゴや小物入れ、山葡萄蔓のストラップなど、女性ならではの感性で細やかな装飾を施す。いつしか、作品が人づてに評判になり、舟形駅の売店でお土産品として売られるようになった。
「売れるような物作ってるつもりはないんだけど、頼まれたから作って出したんだ。値段も相場が分からないもんだから、提案した値段が安すぎると言われたこともあったんよ。適当な性格だから、同じように決まった形に作って行くのはあまり性に合わなくてねぇ。だから駅に置いてあるのも同じものはほとんどないと思う。自然に曲がってる形とか、色をそのまま活かして作っていく方が向いてるんだなぁ。」自分では適当と言うが、彼女の作った物を見ると、大雑把に作っているとは到底思えない程に細かい作品が多い。昔ならではの技法というわけではなく、自身から溢れるアイディアを試行錯誤しながら形にしていく。瓶を蔓で装飾した味わい豊かな花瓶や、フクロウの形をしたオブジェなど様々な編組品(※へんそひん)が家の棚に並んでいるのを見ると、彼女の自由さが感じられる。作った編組品の多くは、看護師の仕事を退職してからのものだ。今は、幼い孫の面倒を見ながら、元々趣味だった蔓細工や裁縫をして暮らしている。面倒見の良い性格のせいか、和江の周りにはたくさんのお願いが集まる。町で主催している里山合宿の件では、訪れる遠方からの参加者に対して木通の蔓でリースを作る体験をさせたり、隣県の中学生が訪れた際は、民泊の宿として家を解放し子供達に料理を振る舞うなどもした。
「ここに来たことがある人からたまに手紙が来るんだよ。あのとき食べた魚が美味しかったから、また行きますとか。たいした料理出してないけど、手紙もらうのって嬉しいもんだ。この町は、冬以外ずっと穏やかで何の災害も起こらない良いところだ。特に田舎とあまり縁のない人には、ここだから出来る事をさせたいなと思って、この土地で穫れた鮎とか、キノコ、野菜を外で炭火焼きにして食べたこともあったよ。すんごく喜んで帰って行ったの覚えてるなぁ。」この土地に暮らしながら田舎ならではの良さを実感し、外から来る人の言葉によってこの場所は改めて素晴らしい場所だと再認識する。着飾るのではなくありのままを知ってもらい、見栄をはらず自然と共に暮らす。彼女の人に対する接し方は、彼女の作品のように自然のままで細やかな気配りがある。無理をせずそのままを尊重する、その生き方がここまで作品に現れる職人も珍しい。

(※)【編組品】竹や、山葡萄、木通等の蔓、胡桃の樹皮などを素材として、ひごをつくり編み組みした製品。

もがみ おがずの盃

〈制作者〉木地:佐藤義英/漆塗り:佐藤学/蔓の台:伊藤和江/藁の苞:伊藤和江
〈素材〉木地:最上のケヤキ、最上の漆/蔓の台:最上のあけびの蔓/藁の苞:最上の藁

もがみの箸留

〈制作者〉箸:信夫正己/留具:伊藤和江
〈素材〉箸:東北の木材(エンジュ、ヤマザクラ)/オイル:最上のえごま油/留具:山葡萄の樹皮

もがみのカトラリーセット

〈制作者〉箸:信夫正己/留具:伊藤和江
〈素材〉カトラリー:東北の木材(ヤマザクラ)/オイル:最上のえごま油/留具:最上の山葡萄樹皮